行政書士のお仕事

 資料によると平成22年度の公正証書による遺言の数は81,984件と出ています。これは、平成元年の約41,000件に比べると2倍以上増えたことになります。しかし一方で遺言書があれば防げたかもしれない相続トラブルが増加しているという事実もあります。最近、自分の財産や事業に対して最後まで責任を持つという考えから遺言書を作成される方が増えてきている反面、まだ遺言書に対して誤解をされている方も多くいるように思われます。

 まず、「遺言書ってお金持ちの人しか関係ないでしょ。」と思っておられる方。これが一番目の誤解です。 私の事務所に遺言書や相続の手続で相談に来られるのはサラリーマンや主婦の方が中心で、財産の額で言えば預貯金が数百万円といった方から持ち家を含めて大体2,000~5,000万円くらいの方がほとんどです。つまり相続の問題は遺産の額の多寡にかかわらず起こる可能性があるということです。

  また、「私の財産は家だけで金銭的なものはほとんど無く、家は私と同居している長男が継ぐことは他の子供たちも納得しているから大丈夫。」といわれる方。これが二番目の誤解です。
 私が日々の業務を通じて分かったことはいくら財産の額が少なくても、兄弟仲が良くても遺族が対立して「争続」になってしまうことは必ずしも少なくないということです。
相続争いが増えた原因の一つとして戦前は「家督相続」として、父が亡くなると長男が全財産を相続するということが当然とされ、他の遺族が異議を唱えることはほとんどありませんでしたが、戦後、法律が改正され子供は皆平等に遺産を相続する権利があると法律に定められ、また個々の権利意識が高まり相続でも自分の権利を堂々と主張するのが当たり前になってきました。最近では、長引く不況のため生活に不安のある人が多くなり、貰えるものは少しでも貰いたいと思うようになってきているのも仕方のないことだと思います。このような現状の中、遺産の内容が分割の困難な不動産だけだったりすると、さらに問題が深刻になってきます。

 そして、「相続争いの心配がなければ遺言書はいらない。」と考えるのが三番目の誤解です。
確かに相続の取り分を巡って相続人が争う「争続」は絶対に避けたい相続トラブルですが、実は相続手続についてのトラブルも意外と多いんです。相続手続とは不動産や預貯金などの遺産を法律や協議に沿って各相続人に名義を変えたり、分配したりすることですが、この手続が結構厄介なものだということです。 まず、相続財産の調査に始まり、相続人を確定するため戸籍を遡って調べたり、遺産分割協議をまとめ協議書を作成したり、役所や金融機関に出向かなければいけなかったり、とこういった気苦労の多い手続をしていかなければなりません。しかし遺言書があれば簡単に進めることができる可能性が高くなります。また金融機関に死亡の事実が伝わるとその人の口座は凍結され前記のような手続が終了するまで預金を引き出せなくなってしまうこともあります。もしそこに生活費が入っている場合に生活費が出せなくなったり、個人事業主の方の事業用口座がある場合に取引先に支払いができないとか、従業員に給料が払えないとかで残された御家族に迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。

 これらの誤解から生じる相続トラブルを未然に防止し残された御家族が安心して相続できるようにするためにも自分の財産に最後まで責任を持つということに関しても遺言書は力を発揮してくれることになります。
ただ、遺言書を作成する際に自分の思いを書いておきさえすればいいというものではなく、法律に定められた様式に則って作成しなければせっかくの遺言書が無効になってしまい返ってトラブルの元になってしまいます。また一般の書式集のとおりに書くだけでは伝えたい人に本当の自分の思いが伝わらない残念な遺言書になってしまったりします。我々が遺言書作成のお手伝いをする際には、作成者と密に話し合い、一人で考えている時には気付かない思いを引き出す努力をし、法的に有効なことはもちろんのこと、その人の思いが残された御家族にちゃんと伝わる素晴らしい遺言書を作成していただくことを常に考えています。突然の大災害が起こりうる昨今自分の財産や事業について、もしもの時のために何の対策もせずにいるということはあまりにも無責任であると言われる時代になってきました。
相続は「家督相続」から「法定相続」へ、さらに「法定相続」から「遺言による相続」に移り変わることにより御家族の絆をより深めていくことになるのではないでしょうか。

執筆者紹介

大阪の前川行政書士事務所さんは遺言・相続と会社法務手続の専門家です。遺言・相続分野では遺言相続のコンサルティングから書類作成、相続手続まで。また、会社法務では、会社設立、契約書、営業に必要な許認可申請等を取り扱っておられます。最近では、下請けの問題に関する相談や知的資産、著作権関係についても連携されている弁理士とともに顧客の要望に答えておられます。

代表者前川明彦
主な業務遺言相続コンサルタント、会社設立サポート
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